5つの視点に基づく取り組み紹介
2025年度まちレポ
1.Walkable UMEDA 構想 2024
梅田地区エリアマネジメント実践連絡会では、2017年に策定した「Walkable UMEDA構想」に基づき、大阪梅田の歩行者空間を単なる移動空間だけでなく、そこで過ごす時間や体験そのものが魅力的になるような「居心地の良い空間」を目指し、様々な活動を推進してきました。近年、JPタワー大阪の竣工やグラングリーン大阪の先行まちびらきなど、大規模再開発が続く「第2次竣工ブーム」を迎え、梅田のまちは大きく変貌しています。この変化を機に、新たな指針「Walkable UMEDA構想2024」としてを再定義しました。本構想は、開発による最先端の都市機能と、地域を繋ぐ広場や街路で、ヒューマンスケールでの出会いと交流や多様な活動を融合させ、「イノベーション創出都市 大阪梅田」の実現を目指します。
そのために、多様なまちの利用者が感じる「心地」や、賑わいの核となる広場などの「Core」と、通行や滞留ができる街路などの「Path」、それらを結び回遊性を高める歩行者空間「Core×Pathネットワーク」といった重要な観点を「5つの視点」として整理しました。これより梅田地区エリアマネジメント実践連絡会が行う取組みを「5つの視点」に基づきご紹介します。
2.「色々な人々に喜ばれる心地を提供する」
「5つの視点」の1点目は、「色々な人々に喜ばれる心地を提供する」という多様な利用者が感じる「心地」の評価です。観光客やワーカー、学生といった立場や目的の異なる人々が、梅田の各場所でどのような感情を抱いているかを把握することで、より多くの人に喜ばれる魅力的な都市空間の創造に繋げます。
調査にあたっては、利用者を「まちとの関わり頻度」で、心地を「安心感」から「高揚感」「癒し」といった「感情の深度」で分類した独自のマトリクスを使用。エリアで開催されるイベントの来場者等に協力を仰ぎ、実際にまちで過ごしながら空間が与える印象を評価してもらうことで、これまで定性的であった「心地」という価値を可視化します。
その結果、日常的に利用頻度の高いワーカーは「安心感」や「落ち着き」を、観光客は非日常的な「高揚感」や「刺激」を求める傾向があるなど、利用者層ごとにニーズが異なることが明らかになりました。この分析結果を、賑わいの核となる広場空間「Core」やそれらを繋ぐ歩行者空間「Path」の計画・改善に反映させ、様々な人々の感情に寄り添い、多くの人にとって心地良いと感じられるまちづくりを目指します。
3.「沢山の人々が出て来て過ごせるCoreをつくる」
続いては、「5つの視点」の2点目「沢山の人々が出て来て過ごせるCoreをつくる」という観点で「梅田ゆかた祭」をご紹介します。2025年度で12回目を迎えた梅田の夏を代表する本イベントは、「みんなで つなぎ、おどろう」をテーマに梅田のまち全体を舞台に開催しました。Coreと定める特設会場5会場では、各エリアが持つ特性を活かし、来場者に梅田の様々な表情を体験いただける「うめだいろ縁日」を展開しました。
メイン会場となるグランフロント大阪のうめきた広場には、夕方から始まる「ゆかたde盆踊り」を目当てに多くの方々が集まり、都心での盆踊りを楽しみました。櫓を囲み一体となって踊る様子は、まさに「Walkable UMEDA構想」のCoreとして目指す、「人々の賑わい」促進を体現する仕掛けのひとつと捉えています。
また、「梅田ゆかた祭」は、各会場周辺の住民・地域の活動団体、出演者、協賛企業・協力施設等、多くの方々のご協力に支えられています。こうした皆様との連携により、多くの方々に愛され、楽しんでいただけるイベントへと成長してきました。Coreとして目指す重要な観点「様々な人々の巻き込み」を引き続き大切にしていきたいと考えています。
今年度は2日間で過去最多となる約1万2千人の方々にご参加いただきました。「梅田ゆかた祭」が夏の風物詩としてまちに根付いていることを実感するとともに、今後も梅田ならではの魅力をさらに深め、ここにしかない価値を創出するエリアマネジメント活動に取り組んでいきます。
4.「様々にCoreを繋げ合うPathを作り出す」
「5つの視点」3点目は「様々にCoreを繋げ合うPathを作り出す」というPathに関する観点です。ここで大切にしている考え方は、第一に、Pathの機能や快適さを改善し、Core間の心理的な距離感を縮めることで、地上・地下・デッキの連携を高める、第二に、Path沿いの豊かな地域文化や人々の営みが、まちの景色や賑わいとして滲みだす仕掛けを作る、第三に、建築との関係や空間のサイズ感を等、人が心地良く感じるヒューマンスケールに整えるといった3点です。
それらを踏まえ「梅田ゆかた祭」では、梅田エリア内の公共的空間11か所で、風情ある手ぬぐい装飾を実施しました。商業施設の歩道沿いや駅構内、地下道や広場等の天井・壁面・吊りサイン等を、統一した装飾展開することにより「催事の一体感」を演出し、移動を楽しんでいただくことを企図しています。
また、この手ぬぐい装飾では文化・歴史を愛する和文化の継承として、大阪発祥の染色法「浪華本染め」を手掛ける株式会社ナカニと連携して行っています。
冬のイベント「UMEDA MEETS HEART」では、メインイベント(コアデー)の2日間に公開空地や道路空間等をステージとして活用し、早稲田大阪高等学校ウィンドバンドや常翔学園高等学校吹奏楽部による力強いマーチング、大阪スクールオブミュージック専門学校による心温まるゴスペルなど、学生が主役の音楽パフォーマンスにより、まちに非日常の彩りを演出しました。道路空間やオープンスペースを活用することで、通りすがりの方や会場を回遊する方々に「見て、聴いて、楽しめる」豊かなPathを提供し、冬の梅田をより歩きやすく魅力的なものにしました。
また、メインコンテンツの一つである「HEART SPOT」では、梅田地区の商業施設・ホテル等の47施設が一体となり、ハートやイルミネーション装飾でまちを華やかに彩りました。大阪駅前地下道の中央通路では、「Umeichi Illumination Avenue」と題し、阪神梅田本店のショーウィンドウと連動したイラストとイルミネーションで通路全体を彩りました。慌ただしい日常の中で、ふと見上げる光に安らぎを感じていただけるような地下道を演出しています。この他にも、道沿いや植栽、ビルのガラス面などまちの至る所に「心あたたまるスポット」を創出し、冬のまち歩きを楽しんでいただける仕掛けを行いました。
5.「Core✕Pathの特性をエリア文化に生かす」
「5つの視点」の4点目「Core✕Pathの特性をエリア文化に生かす」については、情報発信の切り口での取組みをご紹介します。「梅田ゆかた祭」と「UMEDA MEETS HEART」の開催期間中、公式Instagramアカウント(@umeda_connect)をメインに、「Walkable UMEDA構想」に基づく活動の情報発信を行いました。
■公式Instagram(@umeda_connect)
https://www.instagram.com/umeda_connect/
「梅田ゆかた祭」では、Pathに仕掛けた「風情ある手ぬぐい装飾」や、Coreでの縁日や打ち水、盆踊り、各会場をめぐるスタンプラリーなどの企画を紹介しました。エリア全体の一体感を醸成し、来街者の回遊を促すことで、まちの魅力を再発見する機会を創出しています。
さらに「梅田ゆかた祭」では、イベントの告知にとどまらず、各会場からメインの盆踊り会場(うめきた広場)へ至る回遊ルートを動画で紹介しています。夏季の熱中症リスクを考慮し、炎天下を避けて地下街や公共施設内を通る屋内ルートを選択し、実際の移動経路を視覚的に示すことで、来街者がルートを具体的にイメージし、安心してまち歩きを楽しめるよう工夫を行っています。
主要なPathのみならず、屋内外を含めた多様な導線がシームレスにつながる「Walkable UMEDA構想」を、デジタルの発信を通じても体現しています。
2025年7月13日 Instagram動画投稿
「UMEDA MEETS HEART」においても、Core×Pathネットワークの考え方に基づき、梅田地区内に点在する会場でブースイベント、ステージプログラム、スタンプラリーを実施しました。
冬季は寒さにより外出意欲が低下し、屋内活動に偏りがちな季節ですが、あえてまち全体を盛り上げる仕掛けを行うことで、「外を歩いて巡りたくなる」冬のまち歩きを創出しました。
SNS発信では、メインイベント「HEART FES」の各会場紹介に加え、まち中に点在する装飾「HEART SPOT」やスタンプラリー会場の詳細案内を強化しました。
2025年12月111日 Instagram動画投稿
季節の特性に応じ、参加方法や各会場の位置関係を一目で把握できる構成に整えました。これにより、初めて訪れる来街者にとっても参加のハードルを下げ、スムーズな回遊と滞在を後押ししています。梅田地区エリアマネジメント実践連絡会では、こうしたイベントを通じ「Walkable UMEDA構想」の核である「回遊」を来街者に体験していただく取り組みを進めています。単なる賑わい創出にとどまらず、SNSを活用して「どのように歩き、巡るのか」を具体的にイメージしていただくことで梅田のまちをより深く、広範囲に楽しむ機会を提供しています。
6.「出会いと発見を育てる」
「5つの視点」最後は「出会いと発見を育てる」というイノベーションの創造に向けた観点です。「梅田ゆかた祭」の関係者が一堂に会して都市の熱を冷ます「梅田打ち水大作戦」。この企画では、ヒートアイランド現象の緩和を目指すだけでなく、古くから日本に伝わる「打ち水」という伝統的な知恵を現代の都市空間で再解釈し、持続可能な都市の未来を考える「発見の機会」を提供しています。
イベント当日は、地域住民や国内外からの来街者、そしてイベント関係者らが垣根を越えて集い、協力して打ち水を行います。この共同作業は、普段接点のない人々が自然と会話を交わし、新たな視点を共有する「出会いの場」となります。皆で同じ目的のために動くひとときが、参加者の中に連帯感を生み、梅田というまちへの愛着を深める大切な縁となります。
参加者一人ひとりがまちの魅力を再発見し、活発な交流を通じて新たな繋がりを育む。この体験こそが未来のまちづくりに主体的に関わるきっかけとなり、まさに「出会いと発見」に満ちた場を創出しています。
7.地域特性に応じた「Walkable UMEDA構想」の実現に向けて
梅田地区エリアマネジメント実践連絡会では、「Walkable UMEDA構想2024」として再定義した指針を浸透させるため、地域関係者の皆様との意見交換を実施し、大阪梅田エリアの地域特性をマップとして取りまとめました。
これまでは行政区画単位での基礎情報しかなかったところ、大阪梅田エリアとしての基礎情報を整理する過程で、特長や課題が明らかになってきました。梅田における大規模再開発は、これまで各建物で個別に実施されてきましたが、今後は梅田エリア内の各地区を繋いでいくことが重要となります。
そのためにはエリア内の交通状況を鑑み自動車の影響を抑制していくことが、各地区を繋ぎ、エリア全体の魅力を高める上で効果的な手段の一つと考えられます。具体的には、エリアイベントの開催時に、週末に限り通行規制を実施することなどにより、歩行者の移動に変化が生まれることが期待できます。
全国エリアマネジメントネットワークより、公共空間と民間敷地を合わせてエリアのアセットとして捉え、その価値を高めていくことがエリア全体の価値向上に繋がるという「エリマネ 3.0」が提起されました。梅田においても、公共空間のマネジメントとして一歩進んだ取り組みを、地域・行政とともに前に進めていきたいと考えております。






